RESEARCH

本研究室では、「多次元マルチメディア信号処理」をキーワードに、信号処理の理論と応用両面から研究を行なっています。

以下に本研究室の代表的な研究テーマを示します。

グラフ信号処理

従来の信号処理では、信号同士の繋がりは単純なものでした。

例えば音声信号は時系列に沿って連なる信号列です。

どのような音声信号でも「時系列に沿う」という繋がり方は同じで、この繋がり方を暗黙のルールとして幾多の解析手法が提案されてきました。

一方、ソーシャルネットワーク・脳機能領域・交通網・機械学習などでは、信号同士の繋がり方はいつでも同じとは限りません。

例えば、twitterのユーザであるAさんとBさんでは、それぞれフォロワーの数、フォローの数が異なります。

効果的な解析のためには、AさんとBさんで異なる信号の繋がり方を考慮に入れる必要があります。

グラフ信号処理は、複雑かつ大規模なネッ トワーク上に配置された信号に対し、その構造を考慮に入れて解析・処理・圧縮等を行う最新の研究分野です。

本研究室では、グラフ信号処理の革新的な理論とその様々な工学分野への応用を目指して研究を行っています。

また、グラフ信号処理技術の応用として、感染症の流行パターン(パンデミック)の解析、自然災害源(山火事等)の推定といった「安心・安全」な社会の実現のための技術の提案を目指しています。

研究事例(グラフ信号処理)


マルチメディア信号の圧縮

従来、信号処理では「信号に含まれている周波数」によって信号を分類してきました。

すなわち、低周波数成分は信号の大域的な近似であり、高周波数成分は(画像では)輪郭やテクスチャなどの局所的な成分を表します。

周波数に基づく映像信号処理は大きな成功を収めていますが、一方、周波数で信号を分類するだけではうまくいかない場合も数多くあることが分かっています。

本研究室では、応用研究であるコンピュータビジョン・コンピュータグラフィックスの知見を基礎的な信号処理分野へフィードバックすることで、革新的な映像信号処理技術の提案に向けて研究に取り組んでいます。

映像信号処理

映像信号処理の研究分野では、映像や画像といったマルチメディア信号のノイズ除去・圧縮・欠損情報の修復・部分強調といった様々な処理・解析の研究が進められています。

映像信号処理技術の1つである画像修復は、雑音が重畳した画像やぼけた画像から未知の原画像を推定する理論・アルゴリズムを指します。

海中、宇宙、暴風雨などの過酷な環境下で撮影された画像(エクストリーム画像)の修復は、海底探査・宇宙開発・監査システム・自動運転といった多数の科学・工学・産業分野で必須となる主要技術です。

エクストリーム画像は、通常の環境下で撮影された画像よりも劣化度合いが大きく、劣化の原因も多いことが知られています。

本研究室では、通常の画像や映像、エクストリーム画像の修復性能を向上させるために、信号処理やコンピュータビジョン、機械学習の革新的なアルゴリズムを提案することを目標としています。

研究事例(映像信号処理)


てんかん発作の検出

てんかんとは一般的な神経疾患の1つで、体のけいれんや意識障害といった突発的なてんかん発作を繰り返し引き起こす病気です。

二次災害によるてんかん患者の事故を防ぐには、てんかん発作が起こったら誰かが駆けつけて適切なケアをする必要があります。

したがって、リアルタイムでてんかん発作をアラートするために、てんかん患者への負担が少ない、かつ高精度な発作検出システムの開発が求められています。

本研究室では、モニタリング動画に対する周波数変換や刷新的な検出判定アルゴリズムの提案に取り組み、より高性能なてんかん発作検出システムの実現を目指しています。

点群データの解析

コンピュータビジョン・グラフィックスにおける3次元データやセンサで取得したデータは点群データとして表すことができます。今日、センサ技術などの発展により大規模かつ複雑なデータが取得可能です。これらの点群データの解析技術は自動運転やリモートセンシングなど様々な技術に応用できます。しかしながら、それらの点群データを解析(圧縮、推定)するのに、従来の信号処理では優れた解析は困難です。本研究室では、グラフ信号処理の視点から革新的なアルゴリズムの提案に取り組んでいます。